prologue

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 ゴロゴロ、ゴロゴロ。  少年の乗った、正確に言えば乗らされた馬車が揺れる無機質な音が永遠と続く。  規則正しい揺れの合間に、たまに大きな揺れが加わり、馬車が進み続けていることを感じさせていた。  規則正しいといっても、馬車はかなり粗末な作りをしているようで揺れの規模が凄まじい。眠気すらも起きてこなかった。  暗く汚いこの空間には、少年と同じ境遇にいる人達が乗っていた。  いや、乗っていると言っていいのだろうか。少年を含め、彼らはまるで砂袋でも積み上げるかのように馬車の中に詰め込まれており、むしろ置かれていると言った方が良いのかもしれない。  膝を抱えていても隣の人間に足がぶつかり、肩がぶつかり、背が押し付けられる。  魚を輸送するときの方がまだ丁寧に扱われていそうだった。  そんな、おおよそ人間に対する扱いとは思えない空間の中で、少年は。 「………」  欠片も表情を変えず、氷のような冷たさの雰囲気を湛えてただ座っていた。  まるで人形のように、濁った瞳で。  馬車の揺れに合わせて少し揺れているだけだ。能動的な動きは全くない。
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