prologue

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 ゴロゴロ、ゴロゴロ。  馬車は進み続ける。少年のような凍りついた規則性で。  周りの人間も、少年と大して変わったところはない。ただ黙って馬車の揺れに身を任せている。  年や性別は様々でばらついているが、皆似たような表情をしている。  しかし決定的に違うのは、彼らの纏うその空気か。  少年は元から何もないかのように虚無感漂う空気を纏っているが、彼以外の者の何も映さぬ表情は絶望に由来していることがはっきりと解る暗さを持っていた。  これまでの人生に絶望するかのように、そしてこれからの人生に恐怖するかのように、そしてそれらから逃げるため、何も感じなくしているかのように、暗く、しかし何も感じぬ表情をしていた。  この空間に共通して言えるのは、『人間味がない』ということだろう。  むしろ、その印象が強すぎて他の一切がもみ消されているように感じる。  そこに、『人間』は居なかった。  絶望に支配された『人間のようなもの』しか、居なかった。  どうしようもなく不浄で、この世の底辺を行っているかのように。
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