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街灯もまばらな、夜道を新米OLと犬がふたり並んで歩く。
仕事を初めて四ヶ月。独り暮らしも初心者で。
やっと慣れてきた独り暮らし。
今日は、ちょっと頼りないボディガードもいるし夜道も、心なしかいつもより明るい気がした。
隣を歩く、みすぼらしい犬に視線を向け、合った目にニコリと笑みを向けた。
「はい。ここが我が家です」
三階建ての集合住宅。
二階の端がアタシの部屋。
駅から遠いし、スーパーも近くに無いせいで空き家が六割をしめていた。
ガチャリ
鍵を差し込み、ドアを開け。
「ただいま」
声を放り投げるも、帰っては来ない返事。
そしたら、犬が、小さく『クゥン』と鳴いた。まるで、返事をしてくれたみたい。
「まあ、狭いけど…どうぞ」
中へと促せば、部屋へと足を踏み入れる犬。
人に慣れてるなあ。
…飼い慣らされて、捨てられたのか。
関心半分、同情半分。
そして、コンビニ弁当も半分。
まあ。
返事したり、人に慣れてたりするのは当たり前だったんだよね…。
だって、その犬は
犬じゃなくて、狼で
…狼男、だったんだもん。
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