さよなら満月

6/9
前へ
/98ページ
次へ
「マキコ大丈夫?」 覗きこまれて、名前を呼ばれハッと我に返る。 いつのまにか、白ばばさまはいなくなっていて。 「し、白ばばさまは?」 「あっち」 指差されたほうを見れば、顔見知りに挨拶をしてるのだろう。 向こうで誰かと話している。 「大丈夫?」 また問われる。 心配そうに首を傾げるシルバ。 急、過ぎる。 帰ってしまうだなんて。 「シルバ、帰っちゃうんだね」 「みたいだね」 動揺してるのを、シルバに悟られないよう、普段通りにしてみる。 「みたいって…シルバは知らなかったの?」 「うん。シルバも、さっき初めて聞いた」 普段通りってどんなだっけ…。 声は、裏返って無い。大丈夫。 顔は…引きつってると思う。 「そっかあ。さ、寂しくなるなあ」 あはは。 なんて、空元気に空っぽの笑い声を上乗せして 本音を冗談めいて呟いてみた。 シルバの顔がまともに見れない。 .
/98ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3351人が本棚に入れています
本棚に追加