十六夜月

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「ただいまー…」 真っ暗な部屋を開け 返事の無い声を投げる。 卒業式が終わった後、アタシは一人部屋のクローゼットの前に立っていた。 どうやって、現実に帰ってきたのかわからないけど 着飾った服と 大量のキュウリと 胸の痛みは 夢で無かった事を訴えていた。 朝起きれば、隣に寄ってくるぬくもりを無意識に探してしまうし クローゼットが、突然開いてひょっこり帰ってくるんじゃないかと頭の隅で考えたりしてた。 式の翌日、シルバが帰った事を管理人さんと隣々人さんに傷心ながら報告したら 「急だったね」 「お別れの挨拶くらい」 って残念がってたけど 二人とも 「マキコちゃん、寂しくなるわね」 って、同じようなことを言っていた。 朝、一緒に出勤してくれたり 鍋パーティをやってくれたり 二人の気遣いが嬉しかった。 .
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