人魚の恋は叶わない

海

　引っ張られるように陸に戻された私は。
　引き摺られるように屋根の下に連れ込まれた。
　私は頭のてっぺんからつま先までずぶ濡れなのに、そんなことも気にしない様子で。

　裸足で立つフローリングの床は冷たい。
　あの海の冷たさとは違う、無機質の冷たさが、嫌だ。

　私を冷たい床に残してどこかへ行ってしまった彼が、何かを持って戻ってきた。
　真っ白の、ふわふわの大きなタオル。それで体を包まれると、たちまち全身の水分を奪われる。

　わしわし。ぱしぱし。
　私の体から大体の水気を奪い終えると、彼はすっかり湿ってしまったタオルを私から取り上げた。
　そして、もう一枚あったらしい真っ白くてふわふわなタオルを私の肩に巻いた。