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「あの」 「あっ、ごめんね」  彼はふにゃふにゃした笑顔から、今度は慌てて申し訳なさそうな表情を作る。  なんて表情の忙しい人。 「こんな時期にそんな格好で海に入っていくから、その、……止めなきゃいけないって思ったんだよ」 「私が自殺しようとしていると、勘違い、したんですか?」  勘違い、の部分を強調したのは、わざとだ。  別に怒っているわけではなかったけれど、そう言うと彼がどんな顔をするか、知りたかった。  すると彼は私が想像していた以上の反応をした。 「本当にごめん!」  土下座しそうな勢いで頭を下げられて、逆にこちらが申し訳なくなってしまう。  一応は自殺を食い止めようとしたのだから、恐らく悪い人ではないのだ。  
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