一、夕暮れの少女

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1、ガタタ…ガタタ… すぐ側を電車が通り過ぎていった。 夕日が辺りを照らす中、俺は自宅のアパートに向かって、線路沿いの道路を一人、足取り重く歩いていた。 俺の名前は草壁亮(クサカベリョウ)。今年から晴れて新入社員として、とある企業に勤めている。期待に胸を弾ませ…のはずだったが、現実はそんなに甘くなく、今日も仕事でミスをして、上司に怒られ、自信の全てを失った状態で家路に着いていた。 「はぁ…」 思わず溜め息が口から出てしまう。 「なんか、嫌になっちゃうな…何もかも」 カン、カン…! 警笛が鳴り、すぐ傍の踏み切りの遮断機が降りていく。 いっそのこと、死んだ方が楽になるのでは…。そんな考えが頭を巡り、踏み切りの方を見た俺の視界に、線路の中に立つ一人の少女の姿が入った。肩まで伸びた赤い髪は夕暮れの光に溶け込むように美しく輝き、身体を覆う白のワンピースが少女の赤髪の美しさを更に際立たせている。あまりの少女の幻想的な美しさに俺はしばらく言葉を失くして、ただ呆然と見入っていた。 しかし、警告音の甲高い音に我に返った俺はすぐに少女に声をかけた。 「何してるの君!そんなところにいたら危ないよ!」
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