プロローグⅠ 血の池、恐怖

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「何で俺がパトロールを…先輩め……。」 7月の13日、騒がしかった街も静まり始める午前11時半ごろ。 派出所勤務の警察官、田嶋博也はポツリとボヤいていた。 何故かと言うと、今日自分が管轄している時間のパトロールを終えて派出所に戻ってくると、同じ派出所勤務の先輩に「最近“例の事件”が多発してるから」と、管轄外なこの時間までパトロールをするように命じられた。 勿論、今日のノルマをやり終えている田嶋は、この先輩警察官に意見、反論した。 先輩の管轄じゃないですか。 という言葉も添えて。 しかし、俺は先輩だの何だのとまくし立てられ、結局は田嶋がこの時間のパトロールをする事になってしまったのだ。 --はぁ~あ、何でこうなっちまったんだろうか。 それは現状からくるのか、それとも別の何かか 解らないが田嶋は心中でそう呟きながら、警察官になることに夢を馳せていた頃の自分を思い返した。 昔の自分は正義感が湖のように満ち溢れていた。犯罪を無くす…そんな甘い夢さえ見ていた。しかし、厳しい現実が容赦なく純粋だった彼につきつけられ、今となっては田嶋博也の中に昔あった正義感という湧き水は完全に干上がっていた。 --はぁ……。 過去の自分を思い返した田嶋は ただ、ただ…空しくなるのを感じた。
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