それは、雲海の神

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蝋燭の火が風もないのにゆらりと、静かに動く。 蝋燭は、五芒星(ごぼうせい)という占いや陰陽の術などに使用される特別な星型の点として、通常ならばチョークなどで描くが、巻物で点と点を繋いでいた。 中心には憂鬱や退屈の類の表情を浮かべている細身の少年。 口元や目が伏せられ、表情は迷惑といった表情に変わった。 「余計な事しないで欲しいんだけど………」 この世界に少年自身を入れても二つしかいない同類がある事をした気配を感じた。 最後にあった同類のしかめっつらを思い出して、口元が僅かに緩む。 思い出したのは、いつのことだろう。 何年も、何百年も昔のように感じた。 「宮様、あの………」 障子の外側から弱々しく緊張した馴染みの声によって、考えから現実へと帰った。 「感じた? まあ、独特の気配だからねぇー」 「――いえ、シャオが暴れなければと思って………」 「だ、ダイジョウブか、な………」 楽しげな声が部屋にこだました。 素早く指先を組み替えて行くと、巻物が床から少しだけ浮き上がり、うっすらと光を帯びる。 「僕も同じ事しないといけないなんて、嫌になるー」 少年の背中にある美しい虹色の羽を広げて、ゆっくりと羽を動かした。 「………ぴったりな子がいるから良いけど」 少年が呟くと巻物が蛇のようにうごめき、障子の目を突き抜けて障子の外側にいた者を中へと引きずり込んだ。 「宮様、悪戯にも限度がありますっ!!」 注意を発しているふっくらとした淡いピンクの唇が、果汁のように美味しく見える。 ぺろっと舌で指を舐める様は、容姿の少年とは掛け離れて、獲物を狙う獣のようだ。 「君に着けたやつね、あることをする為に神が造った品だよ。それをやらないと、ねぇー。絞め殺されちゃうってオプションつき」 さあ、どうする? 少年は、頬を包み込んで視線でそう語る。 捕まえて、その上で絞め殺すなどの脅しをしている。 選択肢はあるのだろうか。
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