それは、従順たる巫女

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白と朱色の衣を列がシャラン、シャランと鈴の音を鳴らしながら、ゆっくりと進む。 列の全員が真っ白な笠を被り、顔を隠していた。 まるで花嫁の列のように、華やかさと神聖さを感じる。 すーと静かに、天幕が上げられ列の中でも小柄な一人が身を屈めて内側へと入っていく。 (――来た、か) ぼ、ぼ………と音をたてながらも次々と一列に並んだ蝋燭に青い炎が燈される。 人とは違う種族だという証のように思える。 それは小柄な人影で揺らめく。 足音が大きくなるのと同時に揺らめきは、炎のように不安定に揺れる虹色の羽。 漆黒の髪は、後ろで結わえられていた。 神父の服に似ているが、背中は羽の為に大きく裂けていた。 小柄だと印象づけた体格は、思ったよりも細身の筋肉質のためだった。 大きめの琥珀色の目は、整った顔立ちを幼くする。 全体に見てしまえば、少年に見える。 「来たの。君が新しい人?」 少年は形の良い口元を緩めて、目の前に正座して沈黙する一人の人物の気配を感じ呟いた。 新しい遊具を手に入れた子供によく似ていた。 「………」 ゆっくりと、動作を伝えるために大きく頷く。 「へぇ、黙禁の術までかけられたの。随分、昔に則るね」 刃物の独特の鈍い煌めきを見せると、小さな肩がびくっと揺れて身体を強張らせた。 少年の手には殺傷だけを追求した結果、異様な形へと変化を遂げた刀身が長いナイフ。 「怯えなくていいよ。これはボクに殺意がある人間しか斬れない品でねぇー」 そして、少年は笠へと刀身を振りかざした。 太陽の陽射しや蜜柑を思わせる鮮やかなオレンジ色の長髪がさっと広がり、一瞬だけ翼のようにも目には写る。 色白肌は、汚れを知らぬ清浄を思わせる。 閉じられていた瞼が開き、強張っているが大きな茶色の目が少年を写した。 全体的には少女から女性へと変わる年齢だとわかるが、まだまだ少女だと言える。
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