それは、王家の罪

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ガシャン、ガシャンと歩みを進める度に、重々しい音をたてる不安げに小さな背丈を伸ばして少女は見つめた。 雲海の国の中央にある、雲海の象徴である真っ白な城。 城の奥深くに姫たる六歳の少女はいた。 一見すれば、ただの鎧に見えるそれは、黒に近い青と白の色合いで分けられてある。 その色合いを使うのは、雲海の王と定められていた。 全身を鎧に包んだ王たる男と共に。 「父様………」 どこまで行くの? 地獄の釜がぽっかりと口を開けているように、深くに延々と続く螺旋状の石造りの階段。 少女は今にも泣きそうな顔をして、男の鎧の先端に掌で強く握った。 「――ここは、王家の罪だ。シャオ」 父である男に肩に乗せられ、怖がる娘たる少女を連れて下へと歩いていく。 「悪いものがいるって、お祖父様が………」 男は、目を伏せて少女の答えを首を振って否定した。 「尊いお方がいるんだ。何百年と人を見守り、平和をくれた方だよ。そして、王家はその方をここに―――」 かっと足音が止むと、少女の頭を優しく撫でて、男は悲しげに目の前を見つめた。 少女も顔を上げて、男と同じ方向を見つめた。そこには、漆黒の箱がいびつに重なった物体があった。 血色で何十にも円が描かれて、アート作品にも見える。 しかし、箱と箱の隙間から聞こえる機械音と星のように数多にある機械のランプ。 目の前にあるのは、機械の箱。 「私や母様は、罪を残したくない」 「これはなあに?」 「シャオ、これを開ける事が姫としてのお前の仕事だ。必ず開けるのだ」 「――はい、王様」 難しいことがわからない子供だからの真っ直ぐですぐした返事。 少女には、未来の事を考える思考はまだ育っていなかった。
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