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問い掛けても、答えがないことは解っていた。
しかし、問わずにはいられなかった。
獣神として生まれて、人に敬愛されて時間と封じされた記憶しか青年にはない。
人からの優しさや気遣いに青年は、触れたこともなかった。
少女の血の気のひいき真っ青になった唇に、青年は、指の腹で優しく撫でた。
――この娘なら、良いかも知れぬ……
ある考えが浮かび青年は、袖口を捲り上げて鋭い犬歯で手首に小さな傷をつけ、少女の唇と心臓に垂らす。
そして、ジュッと皮膚が焼けて行く音と生臭いが視界と鼻を刺激する。
ツー……と血が流れたヵ所には火傷のようになった。
流れた血を指の腹ですくい、紅のように唇に雑ではあるが塗った。
「獣神としてこの身、血に命令する」
力強く、通った声で青年は静かに少女の顔を見て言った。
意識がなく、ただの死体になったはずの少女が指先や爪先が脈を打つようにびくびくと動き始めた。
次第に身体全身へと拡がり、全身が痙攣していく。
それに合わせるようにして、少女の身体の周りには白い光の被膜が出来はじめていく。
「新たなる生として、躯を変え。御霊を迎えろ」
そして、真っ赤に染まった互いの唇が触れ合った。
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