思い出

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親父は酔っ払うと、良く肩を揉ませるんですよ。 「もっと強く!」とか 「もっと右!」とか、うるさく注文付けながら。 ある日、いつものように肩を揉んでいたら、 「母さんなぁ・・・・」 「本当に綺麗だったんだぞ・・・・」って話し始めたんです。 どうやら、バスガイドだった母親が、擦れ違った親父に一目惚れした・・・・という話でした。 「母さん歌、上手くてなぁ」 「モテたんだぞ。お父さん、しょっちゅうヤキモチ妬いてた」 「お前が産まれてからは、お母さんの、オッパイ占領されてなぁ・・・・」 「逢いたいよなぁ・・・・」って親父泣きながら言うんです。 「うん。逢いたい・・・・」って僕も。 「ゴメンな・・・・」 「ゴメンな・・・・」って泣いてましたね。 親父が泣くのを見たのはそれが初めてでしたね。 親父は今年、六十になりましたけど、再婚もせず独身です。 今でも結婚指輪着けてますね。 一生賭けて、思い出を開いては眺めて、撫でて、守っていくと、覚悟しているように見えましたね。 なんだかんだ言っても、親父の事好きですね。
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