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「猿……?」
そう、それは確かに猿だった。
動物園でよく見る猿が、少し大きくなっただけだ。そして、機嫌が悪そうな顔で秋也を見ていることを覗いては、何も問題は無い。
――――そう、それだけだ。
「あ? 何ポケーッとした面しとんのじゃ、われぇ」
秋也は今度こそ耳を疑った。
猿が口を開き、それに合わせて言葉が聞こえて来る。
人間で例えると、スキンヘッドでサングラスをかけ、花柄のシャツを着ていて、危ない仕事をしている体つきの良いオジサンのような声だ。
秋也は辺りを見渡し、この生きた猿を使った年期の入った腹話術をしている人間の姿を捜そうとした。
凄い人だ。一体、どのくらい練習したのだろうか?
――――そのとき、猿が背中に手をやり
「ナメとんのか!おんどらぁっ!」
―――何かを取り出し、歯を剥き出しにして叫んでいた。
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