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「ぐぁっ…………!」
その衝撃で、藍は後ろにぶっ飛ばされた。
あまりの腹部の痛さに顔を歪める。
「……っ!!!」
容赦のない二撃目にすぐさま反応し、後ろに飛びのく。
続く三撃目、四撃目も最小限の動きで躱していった。
大丈夫、落ち着けば避けられない攻撃じゃない。
冷静になろうと、相手の一撃一撃に気を使う。
だが、腹部に気を使っている分、動きが鈍くなる。
また、木刀を持っていない今、攻撃することもできない。
藍が追い詰められているのは、目に見えていた。
「よく躱しますねぇ。でも、体力が持ちますかね?」
答える余裕など、藍にはない。
しかし、相手には口を開く余裕があるのだ。
もう、木刀には頼れない。
負けることもできない。
藍は意を決した。
―――次で決める……!
相手の攻撃を後ろに下がりながら避けていく。
しかし、建物には端があるもの。
藍はついに壁際まで追い詰められた……!
「もう避けられませんよ。」
そう言って、相手は振りかぶった。
しかし、相手の捉えた先に藍はいない。
飛び上がり、その攻撃を避けたのだ。
「はぁぁぁあっ!!!」
「!!!」
そして、背中側にある壁を蹴り、反動を使って相手目掛け、思いっきり飛び込んだ。
渾身の一撃。
だが
「……直線攻撃ほど避けやすいものはありませんよ。」
その一撃は当たらなかった……。
相手を過ぎ、着地する。
振り返らずともわかる。
今、私の首には、相手の木刀が突き付けられているだろう。
少しでも動けば、間違いなく終わる。
「私の勝ちですね。」
私は、負けたのか……。
この状況なら、誰がどう見ても勝負はついた。
「勝者、沖田!」
原田もそう思い、試合を終わらせる。
その言葉に、藍は反応した。
「沖田って……。」
「ふふ。自己紹介がまだでしたね。私は沖田総司と申します。こう見えても、隊長をやっているんですよ?」
朱音からは、新撰組で一、二を争う実力だと聞いていた。
そりゃ、勝てないよね。
開き直りにも似た感情。
藍は大きなため息をついた。
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