320人が本棚に入れています
本棚に追加
「終わりましたよ、土方さん。」
子供のように無邪気な笑顔で、沖田は土方の元に駆け寄る。
「見てりゃあわかる。」
ぶっきらぼうにそう言い放ち、藍を見た。
藍は頭の中で、このあとの行動を考えていた。
負けたのだから、入隊は許されない。
だとしたら、どうやってお姉ちゃんと連絡を取ろうか……。
などと考えていると、ふと目の前に大きな影があった。
「あ…………。」
竹刀を担ぎ、藍を見下ろす土方。
きっと「帰れ。」とか言われるんだろうなぁ。
「立て。」
「へっ?」
意表をつかれ、間抜けな声が漏れる。
「立てと言ったんだ。」
「あ、はい……。」
腹部を押さえながら、立ち上がる。
さっさと出ていけということか?
「すみません、すぐに出ていきます。」
そう言うと、土方は眉間に皺を寄せた。
そして、思いもよらぬ一言を放つ。
「何を言っているんだ。合格だ。」
「…………はぇ?」
「お前は二度言わすのが好きなようだな……。」
土方の頬がぴくぴくしているのを見て、「すみません。」と謝った。
「でもっ、なんでですか!? 負けたんですよ、私!」
「端からこいつに勝てるなんざ思ってねぇよ。あれだけ総司の攻撃を避けりゃあ十分だ。それより……。」
土方は、持っていた竹刀で藍の腹部を軽く突いた。
「うがぁぁぁあっ……!!!」
あまりの痛さに、悶える藍。
沖田や原田はその姿を見て、くすくすと笑っていた。(と言っても、原田は豪快に唾を飛ばしながらで、くすくすという表現ではおさまらないのだが。)
最初のコメントを投稿しよう!