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「なっ……なにするんですか。」
涙目になりながら、土方を睨みつける。
「怪我の手当てをしてもらえ。おい、総司。あいつのところへ連れていけ。」
人の質問に答えろよ! と叫びそうになったが、それどころではない。
「はいはい。それじゃあ行きましょうか。」
さっきまで勝負をしていたとは思えないような沖田の様子に少し戸惑いながらも、コクリと頷いた。
あいつって、誰だろう。
怪我の手当てをしてくれるみたいだから、お医者さんかな……。
沖田の後ろを歩きながら、そんなことを考える。
「そういえば、名前をまだ聞いてませんでしたね。貴方の名前は?」
前を歩く沖田が、突然振り返り、尋ねた。
「あ、花山院 藍です。」
「やっぱり。花山院 藍……ですか。」
その言葉に少しひっかかる。
「やっぱりって、どういう意味ですか?」
尋ねてみたが、沖田はにっと笑っただけだった。
「ねぇ、藍って呼んでもいいですか?」
「はぁ……。どうぞ好きなように。」
「ふふ。」
嬉しそうに笑う沖田。
先程見せた殺意はどこから来たのだろうと思うほど、沖田の変わり様は大きかった。
それにしても掴み所のない人だ。
沖田の話すことに「はい。」やら「まぁ……。」などと答えていると、とある部屋の前で止まった。
「ここです。」
ここに医者がいるのだろうか。
ぼーっと襖を見ていると、沖田が声をかけた。
「沖田です。今、大丈夫ですか?」
「あ、はい……。」
懐かしい声が聞こえた。
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