物語の始まり

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「あ………………。」 開いた襖の奥には、藍と同じように驚いた顔。 「知り合いじゃない、なんて言わせませんよ?」 「………………。」 二人とも、何も言わなかった。 何か言えば、ボロが出ると踏んだからだ。 「朱音さん、藍の手当てをお願いします。では、あとで説明してくださいね。」 そう言って、沖田は部屋から去っていった。 「…………お姉ちゃん。」 朱音を見つめ、呟いた。 朱音は、眉をへの字に曲げ、心配そうに言った。 「なんで来たの……? それに、その格好……。」 「とにかく、お腹の手当てをしてほしいんだけど。」 「それどころじゃないでしょう……。」 「いや、それどころだろ!」 つい大きな声を出してしまい、腹の傷に響いた。 あいたたた……と痛がる藍を見て、朱音は救急箱を取り出した。 「傷を見るから、服を脱いで……?」 一応周りを警戒し、服を脱いだ。 「あら……結構強く叩かれたのね……。沖田さん……?」 「あたた……。うん。あの人、すごく強かった。」 傷具合で誰にやられたかとかわかるんだ、と少し感心した。 腹の手当てが終わり、面と向かい合う二人。 先に切り出したのは、朱音だ。 「……どうして来たの?」 「お姉ちゃんから連絡来なくなったから。そっちこそ、どうして連絡くれなかったの?」 朱音はばつが悪そうな顔をした。 「それは……。」 口ごもる朱音。 藍は見兼ねたのか、ため息をついた。 「無事だったならそれでいいよ。とりあえず、一安心した。」 藍はにかっと笑った。
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