物語の始まり

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ムッとした表情の藍花に、吉田はクスクスと笑い、高杉は頭を抱えた。 「行きたければ行けばいいよ。死ぬ覚悟があるならね。」 「…………。」 挑発的な吉田の言葉に、藍花は黙り込んだ。 その様子を見兼ねた高杉が、口を挟む。 「ダメだって言ってんだろ。危険すぎる。」 「でもそれを決める権利は、晋作にはないよね?」 「権利どうこうの問題じゃねぇだろ。現に朱音と連絡がつかねぇんだぞ。んな所に藍花をやれるか!」 その言葉に藍花はハッとする。 そうだ。 お姉ちゃんはへまするような人じゃない。 そのお姉ちゃんと連絡が付かないってことは、危険な状況にあるのかもしれない。 そこへ飛び込むのは晋作の言う通り、確かに危険だ。 けど、それを救えるのは……。 「…………私、行く。」 「なっ……!?」 藍花の言葉に高杉は目を見開き、吉田はにこりと笑った。 「お姉ちゃんが危ないかもしれないのに、ここで待ってるなんてできないよ。晋作は顔が割れちゃってるし、栄太郎は行ってなんかくれないでしょ? なら、私が行く。」 覚悟を決めた藍花の瞳。 それを見て、高杉は何も言えなくなった。 「うん。いってらっしゃい。でも、行くなら一つだけ条件がある。」 吉田は人差し指を立て、条件提示をした。 「男として、新撰組に入隊すること。」 「男として……?」 藍花は首を傾げる。 吉田はこくりと頷いた。 「女だと嫌でも目立つ。だから、平隊士に紛れ込むんだ。」 「なるほど。」 藍花は納得し、大きく頷いた。 「…………危なくなったら、朱音引き連れて帰ってこい。」 「晋作…………!」 ついに高杉も折れ、藍花は満面の笑みを浮かべた。
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