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「それじゃあ、いってきます!」
髪を結い上げさらしを巻き、袴を履いた藍花は元気よく手を振った。
高杉と吉田も手を振り返す。
藍花の姿が小さくなった頃、高杉が口を開いた。
「よく行かせたな。お前の考えてることがわからねぇよ。」
「そうかな?」
「普通、好きな女を男所帯に行かせねぇだろ。」
「あんな奴、好きじゃないよ。人をけなすのやめてくれる?」
「お前も十分人をけなしてんだろ。」
「ま、あれだけ必死な姿を見たら行かせてあげたくなるだろう? 面倒見のいいお兄さんとしては。」
高杉は頭を掻いた。
「どうも、俺とお前じゃ考えが一致しないらしいな。」
「そうみたいだね。」
悪戯っ子のような笑みを浮かべ、吉田は踵を返した。
「さぁ、こっちはこっちで動き始めようか。」
「…………そうだな。」
高杉もそれに続いた。
歯車が狂い始める。
誰も気付かないほど、小さな歯車が―――……。
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