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「こっ……こんにちは!」
門前で緊張気味に声を張る。
もう一度自分の身なりを確認し、誰か出てくるのを待った。
しばらくして、一人の男がやって来た。
「うちになんか用か?」
背が高く、体格のよい男だ。
「入隊希望で来ました!」
「入隊希望……ん?」
突然、男は藍花の顔をじろじろ見出す。
もしかして、女だとばれた……?
身体を強張らせて、じっとその視線に堪えていたが、我慢できなくなり、口を開いた。
「あの……なんでしょう?」
「あぁ、いや。知り合いによく似てると思ってな。えー、入隊希望だったか?」
「は、はいっ!」
「よし、ついて来い。」
そう言って男は中に入っていった。
その後ろを藍花がついていく。
庭のようなところを歩いている途中、いきなり男が話しかけてきた。
「そういや、お前、名は?」
名前……。
藍花と答えると、女だとばれてしまうかもしれない。
少し考えて、答えた。
「花山院 藍といいます。」
「花山院……。ふぅん。」
男は納得したように小さく2、3度頷く。
「着いたぜ。」
門から少し歩いたところにある、道場のような所。
そこに藍花――否、藍は連れていかれた。
道場の中に入ると、平隊士らしき人達が稽古している最中のようだった。
藍は、道場の壁に背をもたれ、刺すような目で隊士達を見る男を見つけた。
見ると、自分を連れてきた男は、その男の元へ向かっていっているようだ。
藍も慌ててついていく。
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