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島根県海上。
「やはり生存者はどこにもいないようです」
自衛隊の捜索が始まって小一時間が経っていた、機内の中をくまなく捜索していた彼らだったが、誰一人として発見する事は出来ていなかった。
更に彼らは無人の機内で奇妙な光景を目の当たりにする。
「隊長、おかしいと思いませんか?
この旅客機、何らかの事故やトラブルに巻き込まれてここにあるとしても、機内の様子を見るだけでは、到底そんな感じには見えません」
若い隊員がワゴンとテーブルを指差した。
「CAがコーヒーなんかを運ぶワゴンですが、物が何一つこぼれていません、更にあちらのテーブルの上にあるコーヒーも、カップに注がれているのにも関わらず、倒れるどころか一滴こぼれた様子がありません……」
「……そうだな、まるで消えた旅客機は最初からここにあったようだ……」
自衛隊の数人が頭をひねっているなか、一人のスーツをきている男が自衛隊の隊長に近づいてきた。
「……何だあんたは……?
オイ!!部外者は入れるなと……」
一喝しようとした隊長に、男は手のひらを出し止め。
「遅れて申し訳ない、警視庁特殊捜査課の雑賀桃士です。
この機体の捜査で今到着しました」
「……ふん、随分遅刻した割にはあんた1人か?警視庁もバカにしているな」
雑賀はよれよれのスーツを着て、ズボンのポケットに手をつっこんだままである、
時に、ボサボサのある程度伸びた総髪の頭を掻き、口には火のついたタバコをくわえている。
その雑賀がくわえているタバコを手に取り。
「いやあ、後一人もうすぐヘリでここに着くはずです」
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