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得体の知れない事態にあわて出す二人。
副機長は必死の形相で通信機を操作しているが、全く反応がない。
「旋回して引き返す!」
機長は操縦桿を力一杯握り込み、旋回の動作を取るが。
「な、何だと!?」
「機長!?」
操縦桿はびくともしなかった。
「何故動かない!?」
「機長!エンジンが!」
「馬鹿な!?何が起こっている!?」
事態の深刻さは客席にいる乗客にも感じられ始めていた。
ガタガタと激しく揺れる機体。CAの表情からも深刻な事態だということは感じ取ることができる。
乗客の幾人かが窓から外を覗き込む。
天気の知識が無いものでも、機体の周りを取り囲むどす黒い雲が普通では無いことは、明らかだった。
「あの雲気持ち悪くないか?」
「あれにつっこむのかよ?」
悲鳴を上げるもの、恐怖のあまり目を閉じ口を瞑るもの、反応は様々だ。
コックピットで必死に操縦桿を握る機長の不安もかなりのものだった。
乗客、機長の不安をよそに高速で飛ぶジャンボ機は一気に積乱雲へとつっこんでゆく。
積乱雲に突入すると積乱雲の中は更に暗く、辺りは1メートル先も見えないほどの、機体のライトすら飲み込まれてしまうほどの闇に包まれてしまう。
今、飛行機が上か下か右か左か、どこを飛んでいるのか解らなくなるほどの暗闇静寂が包む。
機長、乗客は不安と恐怖の中確かに見たのだった。
暗闇の中に潜む何かを。
「……な……化け……もの………」
積乱雲がはれると702便の姿はそこには無かった。……
まるで神隠しであるかのように……
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