第三話 てんてこ舞いの新従者

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「咲夜、入るわよ」 ノックしてはいるが、返事を待たずに部屋に入る。部屋ではベッドで咲夜が寝ていた。 怪我の具合はさすがに三日程度では変わることはない。 それでもぎこちない動きで上半身を起こす。 「お嬢様。霊夢と魔理沙はきちんと働いていますか?」 「全然よ。妖精メイドの方が要領がいいくらいだもの」 レミリアはあからさまな溜め息をつく。 「慣れていないことです、仕方ありませんよ。」 「それは分かってるんだけど、どうしてもあなたと比べちゃうの。初めて来たときから何でもできた貴方と。」 「あら、私も最初から何もかも出来たわけではありませんよ?」 レミリアは知ってるわよ、とため息混じりに呟く。 咲夜のベッドのわきにイスを移動させて腰かける。 「いつも感じてないわけでは無いけれど、あなたが居ないとこんなにも不便なのよね… 早くあなたの淹れる紅茶が飲みたいわ」 「努力どうこうで怪我は治りませんから、どうしようもありませんね…」 咲夜の表情が少し暗くなる。 それに気づいたレミリアは、咲夜に目線をあわせる。 「嫌な訳ではなく、むしろ嬉しいのですが、なぜ私の部屋に毎日来られるのですか?私の怪我は一日二日では治りませんし、私は働け…」 働けない、と言うつもりが、レミリアに口を塞がれて止められる。 「貴方と話したいから、かしら。それに前のあの事件の時も言ったでしょう?」 ―――私たちにとって、貴方の価値は働く事以外にもあるの。 たとえ貴方が両手両足無くなってもこの館に置くわよ。 「働けなくても、あなたは私達にとって大切な存在なの。それに好きな人に会うのに、わざわざ理由がいるのかしら?」 その言葉がとどめを刺したようだ。 咲夜は込み上げてきた嬉しさを、涙という形で溢れさせる。 「ほらほら、自分で拭けないのに泣かないの」 レミリアは涙を拭ってやる。 「す、すみませ…」 いつもはそつなく何でもこなす咲夜の、弱々しい姿。それを知っているのは、レミリアだけだった。
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