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「咲夜、入るわよ」
ノックしてはいるが、返事を待たずに部屋に入る。部屋ではベッドで咲夜が寝ていた。
怪我の具合はさすがに三日程度では変わることはない。
それでもぎこちない動きで上半身を起こす。
「お嬢様。霊夢と魔理沙はきちんと働いていますか?」
「全然よ。妖精メイドの方が要領がいいくらいだもの」
レミリアはあからさまな溜め息をつく。
「慣れていないことです、仕方ありませんよ。」
「それは分かってるんだけど、どうしてもあなたと比べちゃうの。初めて来たときから何でもできた貴方と。」
「あら、私も最初から何もかも出来たわけではありませんよ?」
レミリアは知ってるわよ、とため息混じりに呟く。
咲夜のベッドのわきにイスを移動させて腰かける。
「いつも感じてないわけでは無いけれど、あなたが居ないとこんなにも不便なのよね…
早くあなたの淹れる紅茶が飲みたいわ」
「努力どうこうで怪我は治りませんから、どうしようもありませんね…」
咲夜の表情が少し暗くなる。
それに気づいたレミリアは、咲夜に目線をあわせる。
「嫌な訳ではなく、むしろ嬉しいのですが、なぜ私の部屋に毎日来られるのですか?私の怪我は一日二日では治りませんし、私は働け…」
働けない、と言うつもりが、レミリアに口を塞がれて止められる。
「貴方と話したいから、かしら。それに前のあの事件の時も言ったでしょう?」
―――私たちにとって、貴方の価値は働く事以外にもあるの。
たとえ貴方が両手両足無くなってもこの館に置くわよ。
「働けなくても、あなたは私達にとって大切な存在なの。それに好きな人に会うのに、わざわざ理由がいるのかしら?」
その言葉がとどめを刺したようだ。
咲夜は込み上げてきた嬉しさを、涙という形で溢れさせる。
「ほらほら、自分で拭けないのに泣かないの」
レミリアは涙を拭ってやる。
「す、すみませ…」
いつもはそつなく何でもこなす咲夜の、弱々しい姿。それを知っているのは、レミリアだけだった。
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