41人が本棚に入れています
本棚に追加
「失礼します、お嬢様。」
「あなたが遅れるなんて珍しいわね。何か用事でもあったかしら?」
夜、人間が寝始める時間帯、紅魔館の主にとっては昼あたり。
「食事の準備をしていました。」
それをきいて、レミリアのベッドで座っていたフランが唇を尖らせた。
「えー、まだなのー?お腹空いたよ。」
咲夜はそのいじらしい仕草に微笑し、
「では先にお召し上がりになりますか?私と美鈴の分以外は出来ていますので」
と提案する。
フランはぱっと笑顔になり、
「うん!お姉さまもいいよね?」
「わかったわ、パチェと小悪魔と先に食堂に行ってなさい。あとから行くから」
今度は聞き終わらないうちに、フランは嬉しそうに部屋を出た。
「咲夜、この事はフランに言っているんだけど」
レミリアの左翼が少し欠け、欠片が蝙蝠となって机に置いていた紙を咲夜の手元にくわえて運んできた。
「これは?」
「カラスの号外よ」
弾幕勝負禁止。そんな見出しが目を引いた。
「紫が結界の修復する影響で人間界に干渉しちゃうんだってさ。」
蝙蝠が左翼に戻り、レミリアが椅子から立ち上がる。
「ではフラン様が退屈なさらない様にしなければいけませんね」
「そうね」
そう言いつつ、ドアを開けて食堂へ行く。
咲夜もそれに続く。
「食事の後私の部屋に来なさい。懐中時計渡すから」
咲夜の時間を操る程度の能力の触媒となる懐中時計。自分以外のすべてを止める時符「プライベートスクウェア」などはそれがないと霊力を余計に消費するし、さらに霊力を溜め発動するまでの隙が懐中時計があるのとないのでは雲泥の差がある。
また、それは大切な物をレミリアに預ける事そのものが忠誠心を表している。
「先に言っておくわ。力は自分を守る為に使いなさい。」
「と、言いますと?」
「運命が見えたの。泣きじゃくるフランがあなたの死体を抱き抱えているのが。そんな運命なら変えるべきでしょう?」
話している間に、食堂に着いた。
「さ、フランが騒がないうちに持ってきて頂戴。」
最初のコメントを投稿しよう!