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「ほらほら、主の命令よ?」
おちょくるような視線を送りながら、咲夜を促す。
一方咲夜は真っ赤にさせた顔をブンブン横に振って、
「い、いけませんそんな私は従者であってお嬢様とそんな」
早口な小声で聞き取りづらいが、否定の言葉を並べているらしい。
小動物のようで可愛らしい仕草だ。
レミリアは見たいものが見れて満足したのか、紅茶を自分の口につけて少し啜った。
「私と結構長く居るんだから私の気持ちくらいわかってるでしょ?でも咲夜の口から答えは聞いて無いわ。自分だけ言わずなんて酷いんじゃないの?」
咲夜は黙って俯いている。
真っ赤な顔からは湯気が出ているようにさえ見えた。
どうやら答えを躊躇っているらしい。
背を向けてだんまりを決め込んでいる咲夜に、レミリアは紅茶をテーブルに置いて近づいた。
「主人と従者がどうこうとか、種族云々とか抜きにして、貴女は私をどう思っているの?咲夜」
「そ…それは…その…」
もにょもにょと何かを呟いている。しかしまた黙り込んでしまった。
と、レミリアが後ろを向いた瞬間だった。
咲夜が、レミリアの頬にキスをした。
呆気にとられたような顔をしたのも束の間、レミリアはすぐ余裕のある笑みを戻し、
「それで返事のつもり?」
と問いかける。
咲夜は小さく頷いた。
真っ赤に染めた頬は林檎のようだ。
咲夜はきゅっと目を瞑っていた。心臓の高鳴りが止まない。
しかし、いきなり唇を奪われ、目を見開いた。
同時に口の中に、香りの良い紅茶が流れ込んできた。口の中に香りが広がり、少し舌が絡まる。
少しして離した。咲夜にとっては何時間もそうしていたような感覚があった。
「お…お嬢様…?」
「美味しい?」
目の前の悪魔はにっこりした。
咲夜はレミリアの置いたカップを手に取ると紅茶を口に含んで、レミリアに同じように口移しした。
「……お返し、です」
相変わらず顔は真っ赤。
しかしその顔には微笑みが溢れていた。
「咲夜…貴女はずっと一緒にいてくれる…?」
「死ぬまでは、離れませんよ。」
「私と、永遠を共に生きてくれない?」
「…私は、本物の化け物であった方が楽だと思っていました。でも、お嬢様は私に『人間としての居場所』を与えてくださった。だから、私は人間でいたいのです。
大丈夫、死ぬまでは一緒に居ますから。」
死ぬまでがどのくらいのかは秘密です。
心の中でそう呟いた。
FIN.
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