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「それで?」
「それでって、何が」
「あの後何も無かったのかよ」
「何もって。唯駅まで送ってきただけだろうが」
翌日の講義は午後からだった。その放課後の話である。
目を丸くした矢満田の後ろで、藤咲兄弟が織元と柳から千円札を受け取ってるのが見えた。
「あーあ。畜生、俺らの負けかよ」
「だから言ったじゃんか、剣人にそんな度胸は無いって」
どうやら二人の行方で賭けをしていたようだが、そんな事剣人にとってはどうでも良かった。
「駅まで送って、ホントにそれだけ?メルアドとかの交換は?」
「いや、特には」
「お前ホントにチ○コついてんの?そう言うのを据え膳食わぬは何とやらって言うんだぜ」
「メイちゃん明らかに剣人狙いだったのに、惜しい事したなぁ、お前」
「別に本人から面向かって言われた訳では無いし、そういうのはもっとお互いを知ってからで良いと思うがな」
そんなんだから彼女出来ねえんだよ、と煉に小突かれ、その拍子にひらりと一枚のチケットが落ちた。
そのチケットを爛が拾う。
「乃居(のいる)シーパラダイス無料入場券?」
「最近人気のデートスポットの?」
「何でこんなもの持ってんだよ」
「あぁ、母親がチケット取ったんだがな。父親が休みを取れなくて俺に回って来た」
「これ、期限今週の日曜までじゃんか。2名様ご招待だろ?誰か誘うのかよ」
「いや、特には…」
考えていない、と言おうとしたその時、講義室の扉が開く。
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