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「残念だけど、レポートは図書館で必死になるしかないわ」
「レポート?メイちゃん、何のレポート?」
「私海洋生物学を取っていて、来週末締め切りのレポートを仕上げる為に水族館を実際に見に行こうと思ってたんです」
「ありゃりゃ。そりゃ残念だね」
「剣人、一緒に連れてってやれば?チケットも無駄にならないし、メイちゃんのレポートも完成するし一石二鳥じゃん」
「そうだな。レポートだけに絞れば別に俺が一緒じゃなくてもいいだろう」
「あ、あの、お気遣いなく」
「光成、お前日曜空いてるなら一緒に」
「け・ん・と・く・ん」
後ろ髪を引かれ、悠に向き直る。
「何だ」
「何だじゃねぇよ。お前の私物のチケットを誰かにあげてさぁ行ってこいっつったって遠慮するに決まってんだろ。そこは男が気を使って【良ければ一緒にいかがですか】って誘ってやるトコなんじゃねぇの?」
「だからって、そんなに喋った事もない男と一緒に」
「あの」
頑として譲らない剣人を諭す悠。だが、明が
「もし、その…。剣人さんさえお時間空いてましたら、…ご一緒させて頂けませんか…?」
と控えめな言葉をかけて来る。
矢満田はその場で崩れ去ったが、周りは拍手喝采だ。
当然断るという選択肢は堅実な剣人には用意されていない。
「…宜しいんですか、俺で」
「はい、…あの、よろしくお願いいたします」
今週の日曜日の九時に乃居駅で待ち合わせと言う事で話はついたのだった。
-END-
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