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二人が到着したのは丁度開館ジャスト、既に受付には列が短いながらも出来ている。
大頭母から貰った特別ご優待券は優先受付が可能だった為、得に並ぶ必要もなく二人はパンフレットを受け取って施設へと足を踏み入れた。
見渡す 青 蒼 藍。
約80mもあるメインストリートは水槽の中をエスカレーターで通る。全面ガラスでまるで海の中を歩いているような感覚だ。
小魚をはじめ、エイやヒラメ、プランクトン性の鮫などが自由に泳ぎ回っている。
「…綺麗…」
まるでお伽話に出てくるお姫様が王子様に見とれる様な声音で明が零した。
「海の生き物がお好きで?」
「はい。…小さい頃父がおっきな水槽で小魚を飼い始めたのがきっかけで…」
「そうですか」
「剣人さんは、お好きですか?」
「好きでも、嫌いでもって感じです。海の生き物を見る機会なんて、残念ながら食卓の上だけだったので。……あ…」
小さな頃、破天荒な兄に連れられて一度だけ海に遊びに行ったのを思い出し、剣人は呟いた。
「…何だっけ、あの魚」
「…?何か?」
「あ、いえ。昔、魚を飼ってた時期がありまして。種類も名前も知らないままだったから、何だっけかと」
やたら奇抜な風貌だったのは覚えている。天命を全うしたのか、それとも水や餌が合わなかったからなのか、魚は1年ぐらいで亡くなってしまったが。
「見つかるといいですね。同じ子が」
「そうですね」
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