3人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの…」
そんな騒動も落ち着いて再び席に戻る。
剣人の隣には明が座った。
「良ければ、どうぞ」
「…頂きます」
ミスと謳われた美人に酒を注いで貰うのは正直悪い気持では無い。
グラスを傾けビールを注いで貰うとお返しにと注ぎ返す。
「剣道、お好きなんですか?」
「ええ、まぁ…」
「将来は竹刀とご結婚を?」
「間違ってもしませんよ」
あの馬鹿共、余計な事を。と思った事けれど口にはしない。
明はふふっ、と控えめに笑って「そうですよね」と言った。
「剣人さんは、…あ、行き成り名前で呼ぶのは失礼だったかしら」
「いえ。お好きにどうぞ」
「あ、では…。…剣人さんは、お付き合いしている女性はいらっしゃるのですか?」
「居たらこんな処で飲んでないと思いますが…」
明はまた「そうですよね」と言った。今度は少し慌てて言ったので、怯えさせたかと心配した。
「じゃあ、…今気になっている人とかは…」
「さしあたって今の所は。残念な事に、女っ気が無くて」
「剣人さん、カッコいいのに。勿体無い」
「そう言って頂けると嬉しいです」
グラスに口を付けて傾ける。
冷たい液体が喉に心地良い。
「私、実はあまりこういうところ得意じゃなくて」
タダでご飯食べさせてくれるって言うから付いて来ちゃったんです。
控えめに明は言った。
剣人は少し口角を上げて「俺もです」と答える。
そこでやっと、明が笑った。
最初のコメントを投稿しよう!