4人が本棚に入れています
本棚に追加
2001年春―。
一人の若者が高校を卒業。
彼の名前は【霞 静流】。
彼は高校時代、決して優秀と言える訳ではなく、どちらかと言えば、教師や同級生達からは【問題児】として扱われる事が多かった。
そんな彼にも、唯一夢中になれ、そして、誰にも負けないと自負していた物があった。
彼を唯一虜にした物…。
それは…、
【音楽】
だった。
彼は、音楽と向き合っている時だけは、嫌な事も忘れられ、時間や食事も忘れる程に熱中出来た。
それに加え、類稀な音楽の資質をも持っていた。
特に、歌唱力に関しては、音楽の教師でさえも唸らせる程の実力だった。
彼は、中学時代の恩師から、歌う事に対しての優れた能力を見抜かれ、高校入学と同時に、地道に仲間を集め、バンドを結成した。
そして、音楽にのめり込んで行くに従って、彼の固定概念の中にある、
【ロックなバンドマンのイメージ】
を追求して行くに従い、ビジュアルも日増しに派手な物へと変化して行った。
両耳はピアスだらけ、髪はやや長めな金髪であったり、茶髪であったり…。
服装に関しても、個人の好みも相まって、モノクロ系の物を着用していた。
そんな彼の容姿に反感を持つ者は少なくなく、教師や上級生達からは目を付けられ、同級生達からは、疎まれたり、怯えられたりしていた。
ただ彼は、顔立ちは整っており、どちらかと言うと、女性的な雰囲気も漂わせていた。
そんな彼も、無事、高校を卒業出来た訳だが…。
高校時代は、まともに勉強するでもなく、就職活動もまともにしていなかった為、当然、現時点では何もない状態である。
唯一有るのは、未だに高校時代のバンドが健在である事。
これだけが、今の彼の支えである事は言うまでもない。
しかし、バンド活動を続けるにも、当然の如く、バンドの運営資金が必要だった。
困り果てた彼は、コンビニで手に入れた求人誌を、真剣な表情で眺めていた。
「うーん…。参ったな…。なんにも考えてなかったからなぁ…」
彼は独り言を呟きながら、携帯電話を片手に求人誌のページをめくった。
「おっ!?ゲーセンかぁ…」
彼の目に飛び込んで来た情報は、ゲームセンターのスタッフ募集の内容だった。
「時給もまぁまぁ良いし、ゲーセン楽しそうだし、電話してみるかな…」
そう、安易な思い付きで携帯電話のダイヤルボタンを押した。
最初のコメントを投稿しよう!