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『プルルル…。ガチャッ』
「はい、ありがとうございます。【IVIS】(アイビス)の田中と申します」
電話口に出て来たのは、愛想の良さそうな男性だった。
「あの…、求人誌を見てお電話をさせてもらったんですが…。まだ募集は…」
静流がそう言い終える前に、電話口の相手が返答をした。
「大丈夫ですよ。面接なんですが、明後日のお昼の1時からでも大丈夫でしょうか?」
軽快な口調で、静流に面接日の提案をする。
「はい、大丈夫です」
静流が一言だけそう答えると、電話口の相手は更に、質問を繰り返して来た。
「それでは、年齢とお名前を教えて頂けますか?」
ゲームセンターでのアルバイトは、18歳以上であり、かつ、高校を卒業していなければ応募資格は無い。
雇用側が年齢確認を行う事は、当然の義務であると言える。
「はい。霞静流です。年齢は18歳です」
静流の返答に対し、電話口の相手が、念の為の確認を取る。
「失礼ですが…、高校生ではありませんよね?」
静流は、既に高校を卒業していたので、何ら問題は無かった。
「はい。3月に卒業しました」
静流は、はっきりとそう答えた。
「分かりました。問題は無いですね。では、明後日の午後1時に、履歴書に写真を貼ってお持ち下さい」
終始愛想が良く、にこやかな雰囲気で話す相手だったが、普段から無表情で物静かな静流は、ただ淡々と答えるだけだった。
「はい。よろしくお願いします」
そう言って、通話終了のボタンを押すと、緊張を解きほぐすかの様に、溜め息を吐きながらベッドの上に仰向けに寝転んだ。
『ボフッ』
勢いよく潰された布団の繊維の隙間から、空気が漏れ出す音が響く。
「ふぅ…。さて…と、履歴書作らないと…」
静流は、寝転がったまま天井を見つめて、そう呟いた。
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