Prologue

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Prologue

夏の終わり―。 風が、少し冷たくなった。 あれから、5年が経った。 遠いあの時と同じ、青い夏空だった。 二人が約束したあの場所には、あの時の二人の面影は無く、大人になりきれない一人の若者が静かに佇んでいた。 時間【とき】は、何事も無く過ぎ去って行った。 しかし、彼の時間【とき】は、あの日から止まったままだった…。 彼の目に映る優しい面影は、微笑みながら打ち寄せる波に静かに飲まれて行った…。 『ザザァ…、サァ…、ザザァ…』 若者以外、誰もいない静かな浜辺には、波の音だけが響き渡る。 彼は、静かに空を見上げた。 秋が、すぐそこまで来ていた。 潮風と波の音が、彼にあの時の記憶を呼び戻す…。 遠い、あの夏の記憶―。
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