獣道

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季節も変わり始めて今日から洋服も秋服にした。靴も変えた。 まだ慣れない靴のせいで足が痛い。 「ちょうど今から七年前になるんだな」 そう呟いた僕を隣に座っている買い物袋を持っていたおばさんが不振そうな顔をして見ていた。 別に僕はおかしくない。 いたってマトモな部類の人間だ。 しかし、こう世の中狂ってしまっていては、おばさんが警戒しているのも無理がない。 安全な国の代名詞だった日本も最近は殺人やら窃盗やらで物騒だ。 そう。物騒だ・・・。今日は、大学時代の友達と飲み会だ。 大学時代は、毎日の様に飲んでは、馬鹿騒ぎをしていた。 よくもまぁあんなに毎日騒げたものだ。 だが、香織は別だ。 そんな騒がしい中でもそこだけがシンとする静かな雰囲気がたたずむ女性だった。 その雰囲気は、21歳には見えなく俺達は大人だと思っていた。 けれど、香織は暗い訳じゃなく笑顔が温かい優しい人だった。 俺は昔から倉橋香織が好きだった。 そう、昔から・・・そして今も。
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