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「上瀧さん、あなたが目を覚ますちょっと前までいたんだけど、今日はもう遅いから帰らせたわ」
「あ……はい」
待っててくれた……? 読書にしか興味が無いあの上瀧さんが? チクショウ、もう少し起きるのが早ければ。大損だ。
日が落ちかけ、グラウンドで部活に励む生徒の姿が無いのが窓越しに確認出来た。一体俺はどれほど意識を失っていたのだろう。
「親御さんには連絡いれてあるから。それしゃ、気を付けてね」
「はい。どうもありがとうございました」
保健室を後にし、下駄箱に向かう。
しんとした廊下。湿った空気が鬱陶しく肌にまとわりつき、より暑さを倍増させる。これだから夏は嫌いなんだ。
他の生徒とは一切すれ違わない。その所為で孤独感がいっそう俺を襲った。なんだか学校に1人で潜入している気分に陥るな。
もう皆帰ったのか……と寂しさ紛れに呟き、下駄箱に差し掛かった。
刹那。物陰から、スッと人が出てきた。そのままこっちに近付いて来る。近付く程その人の容貌が明らかになり、俺を驚嘆させた。
「じょ、上瀧さん……?」
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