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校門を潜ると、私立とだけあって他の学校と比べて大きく白い校舎が威風堂々と佇んでいる。 パタパタと手で扇ぎながら、俺も駆け足で教室に向かった。 「す……涼しぃ~」 教室は常に冷房が効いている。肌に気持ち悪く絡み付く汗が急に冷え、若干寒気を覚えた。 来るのが少し早かったらしく、クラスメイトも集まりが宜しくない。きっとぎりぎりまで家で涼んでいるのだろう。罪な奴等だ。地球に謝れ。 まあとかく言う俺が早く来る理由は、涼しさを求めてという1つのみではない。 とある人を見る為だ。 「…………」 学園一の美少女と称される、読書好きの女の子。 「…………」 教室の隅で、椅子に座って読書に勤しんでいる小柄な女の子。 定期的に聞こえる、小さな手によってページが捲られる音。瞳が縦に繰り返し動き、その姿はまるでハープを奏でる女神にさえ思われる。 美化しすぎだって? そんなつもりは一切ない。俺は見たまんまの有りのまま感じた事を述べただけだ。決して過大評価なんかではない。
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