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ドクッドクッドクッドクッ……
ユリの心臓は今までにないぐらい大きな音をたて、その体を震わせていた。
『大丈夫よ。こんなのみんなやってる事なんだから…』
激しく鼓動する心臓を落ち着かせようと頭を働かせるのだが、考えれば考えるほど緊張はユリの体を震わせる。
『いつも買い物してるときのように、自然にしていれば……!』
ユリは震える手を伸ばし、目の前の商品棚のアーティストCDを掴んだ。
ドクンッドクンッドクンッドクンッ…!
『ハァッ……ハァッ………』
心臓の高鳴りは更に加速を増し、自然と息が上がる。
ユリは、その手にしたCDに収録されている曲名を眺める。
心臓の動きと共に手にしているCDが微かに揺れる。
CDの曲名を確認しているフリをしながら周りを確認する。
『よし、大丈夫。誰も私なんか見ていない。』
ユリは手にしたCDを持ったままレジから遠回りに移動し始めた。
人が居ない棚の裏を通るとき、ユリは素早くバックにCDを入れ、そのまま店の出口へと向かった。
ドクッドクッドクッドクッドクッドクッドクッドクッ………
心臓の音で視界が揺れる。
『あと少し。あと少しで店の外よ。』
ガーーーー……
自動ドアが開く。
「ありがとうございましたー。」
レジの向こうから店員の挨拶の声がした。
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