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勝ち鬨をあげろ
周囲の連中も見物を始めたようだ。
多くの者に見られながらの敗北。
ヤツにも味合わせてやる!
半歩踏み出して、右の刃で牽制する。
当たらない距離だと判断したのか、ヤツは僅かに顔を反らして避けた。
仕返しとばかりに、ヤツが刃を繰り出そうとした。
俺はその一瞬の隙を見逃さなかった。
体勢を低くしたまま一直線で飛ぶ。
虚を突かれたヤツが慌てるが、もう遅い。
時間の流れが遅く感じる。
願って止まなかった瞬間が今、訪れようとしている。
これで俺の“居場所”を取り返す事が出来る。
俺は左の刃を、ヤツの首筋に添えるように当てて、一気に引いた。それは一筋の朱を描いた。
勝った……。
遂に俺は取り返したんだ。
嬉しさのあまり、俺は思わず、凱歌をあげた。
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