勝ち鬨をあげろ

1/1
前へ
/6ページ
次へ

勝ち鬨をあげろ

 周囲の連中も見物を始めたようだ。  多くの者に見られながらの敗北。  ヤツにも味合わせてやる!  半歩踏み出して、右の刃で牽制する。  当たらない距離だと判断したのか、ヤツは僅かに顔を反らして避けた。  仕返しとばかりに、ヤツが刃を繰り出そうとした。  俺はその一瞬の隙を見逃さなかった。  体勢を低くしたまま一直線で飛ぶ。  虚を突かれたヤツが慌てるが、もう遅い。  時間の流れが遅く感じる。  願って止まなかった瞬間が今、訪れようとしている。  これで俺の“居場所”を取り返す事が出来る。  俺は左の刃を、ヤツの首筋に添えるように当てて、一気に引いた。それは一筋の朱を描いた。  勝った……。  遂に俺は取り返したんだ。  嬉しさのあまり、俺は思わず、凱歌をあげた。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加