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彼女が死ぬ直前
夕日が見える丘
彼女が死んだ時、僕は彼女の隣にいた。
僕達2人は街が見下ろせる丘に登って夕日を眺めていた。
その時も僕は彼女の『自分の意見』を聞いていた。
「細胞には自らを殺す細胞死――アポトーシスという作用がある。
それは、例えば手足の指を作る時に作用する」
「知ってるよ、手とか足の指の間の細胞が死ぬんでしょ?
生物の授業で習った」
僕が彼女にそういうと彼女は微笑を浮かべた。
「もし……もしも、その細胞死を起こす命令が人間の心を司る細胞でだされたとすれば――」
彼女はほんの少しだけ間を開けて、目を閉じた。
「――人間は死ぬ。 自殺という形で」
彼女は言い終えると僕の体に寄りかかった。
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