からっぽのショーケース。

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私は一軒のお店に辿り着いた。 まだ営みを始めたばかりのようで、質素な木造店。周りに飾り物など見当たらない。ショーケースを覗いてもからっぽ。 何故だか惹かれて店内へ入ると、奥から小さな女の子が顔を出した。 「ごめんなさい、まだ売るものがないのです。コーヒーくらいしかご提供できませんがよろしいですか?」 かわいらしい声であやまる女の子に頷いてテーブルについた。 出されたのは湯気たちのぼるコーヒー。テーブルの隅にある角砂糖をひとつ取り出してカップにぽとり。 窓の外をながめながらコーヒーをいただいてると、キッチンからは香ばしいパンのかおり。再び女の子はトレイを持って姿をあらわした。 「あなたはこのお店の第一号さんです。試作ですが、このパンはサービスです、どうぞ、おめしあがりください」 まるまるとした質素なパンを手にとってまっぷたつに割った。 するとその中に流れ星がみえた。 星ごと食べた。その味はミルキーウエイ。 店主に礼をして、 店を出た。 私はまだ旅の途中。 .
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