37人が本棚に入れています
本棚に追加
五年前の夏。姉の日和(ヒヨリ)はドライブに出掛けたまま帰ってこなかった。
行方不明となった三週間後、警察から電話があった。
姉の乗っていた車が見つかったのだ。
姉は車の中にはおらず、数十メートル離れた祠の前で死んでいたのだ。
姉の死について知る者はいない。姉が姿を消し、今に至るまで姉を見た者はいなかった。
証拠不十分により、すぐに捜査は打ち切りになってしまった。
最終的に警察は自殺と言った。
姉は自殺などしない。そんな素振りも、辛い悩みを抱えていたという話もなかった。
母も父も怒っていた。それは捜査をしない警察に対してか、それとも姉を殺した誰かにか。
数日が経ち、姉の葬式が開かれた。雨の降る日に。
時が経ち、姉の存在は思い出に変わりつつあった。
いや、もう思い出になってしまったのだろう。
もう姉の声を思い出す事は出来ない。それ程の存在となってしまったらしい。
でもそれでいいんだ。
それでいいはずだった---。
最初のコメントを投稿しよう!