愛嬌ハイテンション

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喫茶店を出たあたしと武蔵は、喫茶店がある通りからあたし達が住む住宅街がある方へと歩き始めた。 「ねぇ、どこ行くの?」 人混みの中はぐれない様にあたしの手を握った武蔵に、あたしは聞いた。 武蔵は一瞬止まろうとしたけど、人混みの中でそれは無理があったのかまた歩き出して顔だけをこっちに向けて答えた。 「結婚すんだろ、俺ら」 「うん」 「だったらあいつらにも言っといた方が良いだろうが」 「あぁ~…。うん、そだね」 一度視線を上に上げて武蔵の言葉の意味を考えてから、納得した様に頷く。 “あいつら”ってのは武蔵の知り合いで、多分あたしも知ってる人達。 っていったら想像出来るのは大体限られてるから、あたしはそれが誰かとは聞かずにただただボーッと武蔵に引っ張られてた。 そしたら武蔵がいきなり振り向いて、 「……なに?」 「お前、もっと速く歩け」 「何で?」 「歩幅が合わねぇんだよ」 「あたしの方が小さいんだからこっちに合わせてよ!」 「後ろからも人来てんだろ。迷惑掛かんだから我慢しろや」 「……」 暴走族の総長やってた武蔵に言われたくないんだけど。 ってか武蔵の口から“迷惑”って言葉が聞けるなんて、あたし今日超ツイてんじゃん。 普段は他に迷惑掛けてるみたいなもんなのに……。 けど、一応武蔵の言ってる事は正しいから大人しく「うん」ってだけ言って、歩く速さを少しだけ速めた。
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