愛嬌ハイテンション

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人が多い通りを抜けたら住宅街に入って、さっきと違って静かな路地を歩く。 住宅街って言っても、あたし達の町は所々に色んなお店があって結構賑やかだ。 定食屋とかコンビニとか駄菓子屋だったりとか、たくさんあるせいかご近所付き合いも盛ん。 しょっちゅうおばさん達がそこの家の前で井戸端会議してたりとかってのも珍しくない。 だからこうやって歩いてても色んな人に会って、 「あらぁ、舞ちゃんに武蔵君じゃないの!」 「あ、こんにちは」 「いっつも仲良くて羨ましいわぁ!」 「武蔵君、またうちにご飯食べに来てちょうだいねー!」 「…ども」 町でもあたし達カップルは有名で、凄く良くしてもらってる。 って言うか、あたし達がってよりも武蔵が有名人で、多分この町で“東城武蔵”の名前を知らない人はいないってくらいだ。 まぁ、何でそうなのかは色々理由があるんだけども。 おばさん達に手を振ってまた10分くらい歩くと、向こうにあるお店の看板が見えてきた。 “バイク東城”。 武蔵の親が営むバイク屋だ。 「多分ここにいんだろ」 そう言いながら武蔵はあたしの手を離してバイクがズラリと並ぶ店内に入ってった。 それに続いてあたしもお邪魔すると、オイルのにおいが鼻を突くと共に懐かしさを感じた。 ここに最後に来たの、いつだったっけ……。 つい最近の事を思い出しながら、店内にあるバイクの部品を眺めてたあたしは、 「あっ、舞ちゃん!」 突然元気な明るい声に呼ばれた。
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