愛嬌ハイテンション

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声が聞こえてきたのはお店の入り口で、そっちに振り向いたあたしは目を丸くした。 「匠!久しぶり!」 「久しぶりぃ~舞ちゃん!元気してた?」 「当ったり前!そっちは?」 「俺は……バイトで毎日てんてこ舞い!まじ忙しくてさ!」 「はは、お疲れ~」 お店に入って来たのは本田匠。 武蔵の元チームメイトでもあり、あたしと同じでつい最近高校を卒業した18歳の青年。 ある意味武蔵よりやんちゃやってて、総長だった武蔵にも「あんま派手な動きすんな」って注意されてた事もある。 だけど、どんなに喧嘩っぱやくても凄く優しくて明るくて、クラスではムードメーカーだったらしい。 何気聞き上手で、あたしも何度か相談して話を聞いてもらった。 あたしが唯一関わってる元ヤンの一人だ。 「武蔵と喧嘩してない?」 「匠こそ、どっかで傷害事件とか起こしてないよね?」 「まさかぁ!俺はもうそーゆーの卒業したんだよっ」 「ほんとに~?」 「ははっ、まじまじ!」 匠がニカッて笑う度に、明るいブラウンのツンツン髪が揺れる。 匠も武蔵に負けないくらい格好良いけど、何より武蔵には無い“愛嬌”がある。 いつだってニコニコしてて、凄く人間として得してるなぁっていつも思う。 武蔵ももうちょっと笑ったらいいのに。 そしたら今よりもっと格好良くなるのに。 そう思って匠に言ったら、 「けど、武蔵が俺みたいにニコニコしてたら気持ち悪くね?」 って返ってきて、想像してみたら予想以上に気持ち悪くて武蔵は今のままで良いって思った。
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