半強制プロポーズ

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「……え?」 4月末。 あたし、倉本舞は街中の喫茶店にいて、頼んだメニューを待ちながら目の前に座る彼の言葉に思わずそう聞き返した。 「“え?”じゃねぇよ。聞こえてただろうが」 机に両手ついてその体勢のまま固まってるあたしに、呆れた様な低い声が届く。 足を組み、胸の前でも腕を組んだまま、口に煙草をくわえるその男。 店内にいるどの人とも違う独特の威圧的な雰囲気を纏ってるのは、つい最近まで彼を取り巻いてた環境のせいだろう。 東城武蔵。 それが彼の名前であり、さっき話したあたしの彼氏でもある。 「俺に同じ事二度言わせんじゃねぇっていつも言ってんだろ」 眉間にがっつり皺を寄せて超俺様発言をする武蔵。 その片足が上下に揺れてるのを確認したあたしは、これ以上ご機嫌を損ねない様に「ご、ごめん」って軽く頭を下げた。 ……貧乏揺すりは武蔵の機嫌が悪い証拠だ。 だけど、思わず聞き返しちゃうくらい武蔵の言葉は信じられないもので――… 「結婚しろ、っつったんだよ」 見兼ねたらしい武蔵は、小さく舌打ちをしながらさっきと同じ言葉を繰り返した。
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