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「…先輩、あついんで窓開けていいすか」
「だ、だめだこのあんぽんたん!もうちょいでスニス司教が降りてくるんだ!」
(降りてくるって、あんたねぇ…。)
あんぽんたんと言われてしまった私。だがしかし、この密閉された部屋の中、私の怒る気はとうの昔に消失していた。
しかし、あんぽんたんは本当に私だろうか。
むしろ、このくそ暑い中スニス司教を降臨させるために3時間も訳のわからぬ呪文を唱えてる先輩こそ、あんぽんたんなのだ。
(因みにスニス司教というのは、最近先輩がはまっている怪しげな宗教の司教らしい。)
「…あぁ、はいはい。じゃあ私はジュース買ってきますね。」
「…おい、俺を見捨てるのか?」
「違いますよ。…優しい優しい私は先輩の為に飲み物を買ってくるのです!」
たったの3秒で考えた口実。
「おぉ!そうか、じゃあ、これ。」
そういって渡されたのは、ひんやりとした500円玉だった。
「後輩のぶんも買ってこいよ。暑いだろう?」
…うっ。
時々、先輩がひどく眩しい。
「…ごちそうになります」
「おう」
こうして実は優しい私の先輩は、真剣に、なおかつ真面目にスニスのやろうを呼んでやろうとしているのだ。
…誰だよ先輩にスニス司教とか教えたの。
「あ、後輩。」
「はい、なんでしょう?」
この部屋の中、唯一冷たいのではないかと思わせるドアノブに手を置いた時だった。
「スニスの分も、頼んでいい?」
「…はい。」
やっぱり、おバカなだけ。
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