先輩と私とスニス司教

6/8
前へ
/26ページ
次へ
――――― そんな、春の少しだけ淡いときめきなるものを抱いたまま、私はオカルト部に入部した。 しかし、どんなに聞いても先輩は桜については「え、知らないぞ!」とわざとらしくしらをきるばかりで。 しかも七不思議はどーしたよ、と言いたくなるほど、最近は変な儀式とかにはまっていた。 先輩曰く、「これが鍵」らしい。 スニスが? そんな、まさか。 そんなことをぐるぐると考えながら、4階のオカルト部部室に帰っていく。 すると、部室に近づくにつれ、私はなんだか周りが静かすぎることに気付いた。 3階に降りる。 吹奏楽の音聞こえる。 4階に上がる。 先輩の呪文聞こえない。 3階に降りる。 吹奏楽の音聞こえる。 4階に上がる。 …物音ひとつしない。 なぜ、なぜだ。 スニスを呼び出していたときの先輩はもっとうるさかったのに。 まさか…熱中症!? 私は吹奏楽の音が聞こえる3階から物音ひとつしない4階の部室へ駆け上がる。 「先輩!」 「…後輩?」 ドアを開け、目に飛び込んだ先輩は、実にぐったりしていた。思わず私は叫んだ。 「先輩のばか!だから窓開けましょうって言ったじゃないですか!熱中症なめんなですよ!」 私は机につっぷする先輩をゆさゆさゆらした。 先輩が「ちょ…揺らすと、は、吐くかも…」と呟く。 「あぁ…もう、今日保健室の先生いないんですから!とりあえずこれ飲んで!」 私は自分が飲もうと思っていたスポーツ飲料を先輩に押しつけた。 「あげます」 「ん、ありがとう後輩」 私も、本当は先輩のために買ってきて炭酸飲料のふたをあけた。 あわてて走ってきたせいで、泡が溢れだす。 「はは、あわあわだな」 「…笑い事じゃないです」 先輩が泡まみれになった私のスカートを笑った。 「ほれ、これを使え」 タオルを渡される。 私は泡をふきながら先輩に尋ねた。 「スニスは結局来たんですか?」 「うん、来たよ」 どうせ、先輩が倒れたくらいだから儀式は途中だろうな…ん? 「今なんと?」 「スニスは、来たよ」 先輩がにやりと笑って、そう言った。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加