プロローグ

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 初めて自分は無力だと思いさせられたのは私が八歳の頃だった。  家に帰ると知らない車が家の前に止められていた。それだけなら問題はなかった。玄関へ入ろうとしたときに風邪で幼稚園を休んだ妹の泣き声が聞こえたのだ。 慌てて中へ入ると父さんと母さんが妹を黒服の人たちに渡すところだった。  「お父さん、お母さん、その人たち誰なの?」  「……父さんたちは今大人の話しをしているんだ。だからハルカは自分の部屋に戻ってなさい」  父さんは私を手で払いのける仕草で去るように促した。だけれど私は納得がいかなかった。初めて出来た妹のアヤメがたった今何者かが連れて行こうとしているのだから……。  「お父さん、あーちゃんをどうするの?」  しかし、父さんは私を無視してアヤメを黒服たちに手渡した。  「ねぇ、あーちゃんをどこに連れて行くの? あーちゃんは私の妹なんだよ?」  幼い子供でもその状況を見るだけで理解することが出来た。”彼らは私の妹をどこかへ連れて行こうとしている”。  「おねーちゃんの私は妹を守らないといけないの……お願いだから、あーちゃんをどこにも連れていかなで……お願いだから……」  私は抵抗した。目の前の黒服の男の足にしがみついた。しかしすぐに母さんが私を引き剥がした。
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