へっ✌

2/11
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
入学してから早々に行われた中間テストがようやく終わり、五月の爽やかな風を感じる余裕がようやく出てきた頃、クラスメートに誘われて初めて喫茶店に入った。 それが、『街角喫茶』だった。 「絶対ウミは気に入るよ!」 海音の手を引っぱるようにして歩く匠の足取りは軽い。 高校生にしては童顔の匠が、やはり高校生にしては大人びた顔をしている海音の手を引いている姿は、すれ違う人々の気を惹くらしく、ここに来るまでどれくらいの人の視線を浴びただろうか。 特に女子高生を初めとする女性達は視線が外せないらしく、しつこく二人の姿を目で追っていた。 匠は童顔と言っても弟系のアイドル顔をしていたし、海音に至ってはその容貌はあまりに整いすぎていた。 こんな二人が連れ立っていれば、嫌でも人目を引き付ける。 視線を気にして俯き加減の海音に対し、匠はどこまでも屈託ない。 そんな匠の手を無下に払うこともできず、海音はひたすら俯いていた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!